ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 茅野市尖石縄文考古館 > 「仮面の女神」の孔(あな)の話

「仮面の女神」の孔(あな)の話

国宝の「土偶」(仮面の女神)には足の裏や股間に直径1センチメートル弱の孔があり、焼いて完成させるときに破裂しないよう、空気抜きの目的で空けたものだろう、と紹介しました。

仮面の女神には、それ以外にも孔が空けられています。ちょっと長くなりますが、このページではそれらの孔についてご紹介します。

まず気が付くのが首の孔

展示されているこの土偶を見て、たぶん誰もがすぐに気が付くのが、首のところの孔でしょう。実際に展示解説をしていてもよく「首のところの孔は何ですか?」と尋ねられます。

仮面の女神の首の孔_左仮面の女神の首の孔_右

この首の孔を見ると、直径は足の裏や股間の孔と同じくらいです。ですので、やはり焼き上げるときに空気抜きの役割は十分に果たしたと考えてよいと思います。
ただ、この首の孔には、足の裏や股間の孔とは違うところもあります。よく見ると気が付きますが、実は孔を縁取るように線が引かれています。右側の孔の方が縁取った線がはっきり見えます。
なぜでしょうか。首の孔は立てておいても見える位置にあるので、文様としての意味合いでこのような縁取りをしたのだろうと思いますが、このことを考えるうえでヒントになりそうなのが、山梨県韮崎市の後田(うしろだ)遺跡から出土した、仮面の女神にそっくりな土偶です。

後田遺跡の仮面土偶

これがその土偶です。よく似ていると思いますが、いかがでしょう?

後田遺跡の仮面土偶_外見山梨県韮崎市後田遺跡出土の仮面土偶

胴体の文様のうち、たすき掛けのような文様の傾きの向き、脚にも文様があるなどの細かい違いはありますが、手・腕の形、ふくらんだお腹、どっしりとした脚、被り物をしているように見える頭など、よく似ていると思います。高さは21.5センチメートルで仮面の女神よりも小ぶりです。
横から見た図の首に、丸く孔が空いているのが見えると思います。この孔も空気抜きの孔なのでしょうか。

後田遺跡の仮面土偶の断面図の画像後田遺跡の仮面土偶の断面図

この土偶の断面図を見ると(上の断面図では、土偶本体をグレーで示しています)、胴体内部が空洞であることが確認できると思います。そして頭の部分は仮面の女神と違って、空洞がないことも確認できます。
図の細い矢印は孔を示しています。頭頂部、口、お腹、股間に孔があり、そのうち、口とお腹と股間の孔が胴体内部の空洞とつながっていることもわかります。
ここで注目してほしいのが、首を貫通している孔です。首を貫通している孔は、胴体内部の空洞や口の孔とはつながっていません。ですので、首の孔は空気抜きの役割は果たさないことになります。文様的な意味があるのか、あるいは別に重大な役割があると考えたくなります。
横から見た断面図では、この孔が胴体と頭部が分離する破損の原因にもなっているように見えますから、わざわざ壊れやすくしているようなものです。壊れやすくなるリスクを冒してまでこの首の孔を貫いているので、貫通させることで初めて可能になる重要な役割がこの首の孔にあったに違いありません。

このような後田遺跡の仮面土偶の特徴からすると、仮面の女神の首の孔も文様のように縁取られたことから、単に空気抜きの孔という以上の重要な役割をもった孔だったのではないか、と思わずにはいられません。その役割とは何だったのでしょうか? 興味は尽きません。

お腹と頭頂部にも細い孔があります

足の裏と股間と首にある孔のほか、お腹と頭にも孔があります。その孔は、これまでに紹介してきた孔よりも細いという特徴があります。もう一度、レントゲン写真を見てみましょう。

仮面の女神のレントゲン画像青い丸で囲んだところに細い孔があります。

この細い孔は、お腹の方は同心円文様の中心にあり、頭頂部の方は被り物のような表現と思われる十字状の立体文様の、やはり中心にあります。
仮面の女神にこの細い孔しかないのなら、これらが空気抜きの孔と考えることもできたでしょう。しかし、この二つの孔よりも太い孔が合計5つもあることから空気抜きを目的とした孔ではないと思います。このことと、文様と一体となっていることをあわせて考えると、これら二つの細い孔には文様として重大な意味があったと考えられます。
その意味がどのようなものか、ということについては、現時点では確定するのは不可能です。今後、似たような土偶がどのような状態で使われたのかがわかるような状況で発掘されない限り、永遠に解き明かすことのできない謎だろうと思います。

関連情報

  • 茅野市公式フェイスブック<外部リンク>
  • 茅野市公式インスタグラム<外部リンク>
  • ビーナネットChino<外部リンク>