Episode2 縄文のビーナスと仮面の女神は世界遺産になる?
茅野市には国宝の土偶、縄文のビーナスと仮面の女神があります。
今回はまずこの2体の国宝土偶の凄さに触れてみたいと思います。
土偶は日本各地で出土しており、その数は20000点にも上るとも言われています。
北は北海道、南は九州までいたる所で出土していますが、国宝に指定されている土偶はこのうちたったの5体です。
20000分の5ということは、0.025%です。0.1%にも満たない非常に希少な国宝土偶。数字から見ても価値のあるものであると言えます。
また、縄文のビーナスは今から約5000年前、仮面の女神は約4000年前に作られたと考えられています。
5000年前、4000年前と一言で言ってしまうとその凄さがぼやけてしまいますが、縄文のビーナスは国宝の中で最も古い国宝であり、縄文のビーナスよりも古い遺物の国宝はありません。
もう少し付け加えてその凄さを強調しますと、多くの人が修学旅行などで訪れことがある奈良県の東大寺は758年に造られました。今から1258年前のもので、世界遺産にも登録されています。
仮に東大寺が造られた年に縄文のビーナスが発掘されたとすると、その当時から縄文のビーナスが作られたのは約3700年前になり、今から東大寺が造られた年に遡る3倍の月日がすでにそのとき流れていたことになります。
そう考えると、縄文のビーナスが作られたのは遥か昔であると実感できるのではないでしょうか。
そんな希少で遥か昔に作られた茅野市の国宝土偶。
それだけ貴重なものであれば、世界遺産に登録されるのでは?と誰しもが思うのではないでしょうか。
しかし、縄文のビーナスと仮面の女神は世界遺産になることができません。
なぜなら、世界遺産の対象となる遺産は不動産のみです。
また現在不動産の遺産であっても、将来動産となる可能性があるものも対象から外れます。
好例として、ルネサンス期に活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「モナ・リザ」と「最後の晩餐」があります。
同一人物が描いたもので、同じ時代の作品ですが、ポプラ板に描かれた「モナ・リザ」は世界遺産には登録されていませんが、教会の壁に描かれた「最後の晩餐」は世界遺産に登録されています。
いずれも世界的にその価値が認められ、多くの人を魅了する絵画ではありますが、片方は世界遺産であり、片方は世界遺産ではない。ある種の矛盾のようなものを感じますが、このように動産は世界遺産の対象から外れてしまいます。
そこで、茅野市の縄文遺産のうち何が世界遺産の対象となるか。
それは、遺跡です。
茅野市の名誉市民第1号の宮坂英弌氏が発掘し、国の特別史跡にも指定されている尖石遺跡や、国史跡の上之段遺跡や駒形遺跡が、その対象となり得ます。
しかし、これらの遺跡で世界遺産に登録することを目指すといっても、現状はただの野原ですので、いまいちピンときません。
むしろ、何のために茅野市の遺跡で世界遺産登録を目指す必要があるのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
Episode3では、それらについて触れてみたいと思います。